押井守のアニメーション映画における人間と人形の描写――『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)、『イノセンス』(2004)を中心に
この論文の目的は、押井守のアニメーションにおける人形の描写を論ずることである。押井守の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)と『イノセンス』(2004)を題材として、とりわけ、人間と、マネキンやロボットといった人型の人形とのあいだの差異に注意を払う。
本質的に、アニメーションは生きてはいないものを生きているかのように動かすので、人間と人間型の人形、もしくは有機物と無機物のあいだの違いは、描写におけるリアリズムの程度によって明らかにされる。しかしながら、押井はこの制限を克服し、1989年以降、彼のすべての労力をレイアウトのプロセスに注いでいる。
『うる星やつら2』では、その違いは、描写における特徴の違いやアニメーションされているかどうかで明らかになる。つまり、肌の色がかわったり、髪の毛や口が存在したりしなかったり、関節を表す二重線が入れられることによってである。しかし、『イノセンス』においては、差異はデザインからは不明瞭であり、アニメーターによるデリケートな方向付けによって決まる。押井のアニメーションのオリジナリティが明らかになるのは、そういった部分である。