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幻覚的映像とジェレミー・ブレークの「時間ベースの絵画」における主体の不鮮明化

ジェレミー・ブレークは、21世紀に入って以来2007年に死去するまで、映画的な諸戦略の利用を通してアニメーション、デジタル・テクノロジー、絵画を合成し、それらを収束させようと取り組んでいた。本稿は、ブレークの初期抽象作品が、ヴィジュアル・ミュージック芸術家たちと、戦後アメリカにおけるカラーフィールド派の画家たちによる実験的なアニメーション映画から受けた影響を議論する。同期間中、ブレークは新しいアニメーション・ソフトウエアを用いつつ、文学的なナラティブ構造に基づいた継時的形状/背景の抽象作品に自らの才能を注いだ。その後、ブレークは時間ベースの絵画から離れ、現代ポピュラー音楽における一匹狼的な主唱者たちとのコラボで創り出された、豊かな質感のノン・ナラティブ的な伝記的スケッチへ移動した。ブレークの幻覚的なムーヴィング・イメージの視覚性は、新しいデジタル・ソフトウエアが活用できることになったとき、感性的により激しくなった。彼の視覚的構成の奥深いハイブリッド性は、写真ベースのイメージ、抽象化されたカラーパッチ、落書き、アニメーションキャラクターなどの、絶えず続くフェードとオーバーレイとを通して伝えられ、主観的意識と見かけの世界との間に豊かな質感の架橋を創り出す。

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