映画「ドラえもん」シリーズに見る子どものイメージ――オリジナル版とリメイク版の比較から――
本論では、日本のアニメーション映画において最長の歴史を持つ子ども向け作品「ドラえもん」シリーズに焦点を合わせ、子どもの表象の変化を読み取ろうと試みたものである。オリジナル版とそのリメイク版を比較し、どのように異なっているのかをストーリーテリングやキャラクターに着目した作品分析を行っている。そうすることによって、オリジナル版には存在しなかった新しい登場人物が増え、物語がより複雑化していること、それに加え、フラッシュバックやツーショットが多用されることによってメロドラマ的要素が強調されていることがわかった。またリメイク版では、オリジナル版にも登場しているキャラクターに新たに「萌え」要素が付け加えられていること、そして、社会的・文化的変化から母性と父性が表象されていることを明らかにした。映画「ドラえもん」シリーズは、30年の歴史を経て、子どもがもはや“なにも知らない純粋無垢な存在”として看做されなくなったことを示している。