「ザ・シンプソンズ」考――現代アメリカ社会への問いかけ――
「ザ・シンプソンズ」は24年もの長期にわたり放映されてきたアニメーションである。この作品はシンプソン家の人々の日常生活をとおして、現代アメリカ社会の重要な問題を提起している。どのエピソードにおいても、シンプソン家の人々やスプリングフィールドの街の人々は、家族や社会、政府、環境に関して問題意識を投げかける。本論文において、「ザ・シンプソンズ」は家族と共同体との役割をどのように描きだしているか、また現代アメリカ社会が直面している問題をどのように映し出しているかということを検討する。家族の価値や主人公であるホーマーの共同体への関わり方は、この作品における重要なテーマとなっている。ホーマーは18世紀のタウンファーザーの伝統の影響を受け、またベトナム戦争批判、国家批判、体制批判、環境への問題意識、女性解放というような1960年代の精神を受け継いでいる。視聴者はホーマーの共同体への積極的な関わり方の中に、無意識に自身の身代わりとして理想とする共同体との関係を重ね合わせるのではないか。