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押井守の長編アニメーションにおける自閉的世界からエンターテイメントへ

押井守はアニメーションの世界的作家として知られている。彼の映像世界は、3つの時期に分けて考えると、彼の心理学的テーマの反映が明らかになる。第1期は、漫画『うる星やつら』を題材にしてファンが喜びそうな作品を作ることで始まる。しかしすぐに自分の好みの世界を前面に出すようになる。『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマ-』(1984)では現実よりも夢の世界が重要であると語る。つづく『天使のたまご』(1985)、『トワイライトQ Yol.2迷宮物件 FILE538』 (1987)では、押井の私的生活が、作品の男と女の関係に反映されている。第2期になると、押井は、青年期の頃からの念願であった実写映画を製作する。実写映画の『紅い眼鏡』(1987)と『ケルベロス地獄の番犬』(1991)では、時代に取り残された革命戦士が送る単調な逃亡生活が表現される。学生運動に乗り遅れた押井の私的な姿が投影され、実写映画を作りたかったという過去の願望の成就がある。こうした作品群を経て、第3期におけるアニメーション作品がエンターテイメントに変貌する。すなわち『機動警察パトレイバー』(1989)『機動警察パトレイパ- 2 the Movie』(1993)『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995)である。これらの作品では社会不安を解消するようにサスペンスは解決し、世界の観客を魅了することとなった。以上のように、押井ははじめ夢のような自閉的世界を描き、ついで青年期の夢の実現を果たすことで中年危機を乗り越え、世界へエンターテイメントを送り出すようになった。

  • タイトル(英語)
From the autistic world to entertainment in feature animations of Mamoru Oshii
  • 発表年
2003年
  • 著者
  • 掲載誌
アニメーション研究
  • 掲載誌巻号
4(1)
  • 掲載誌ページ
19-26
  • 掲載誌ウェブページ
https://www.jsas.net/index_JJAS.html
  • キーワード

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