津堅信之『ディズニーを目指した男 大川博』(日本評論社、2016)
東映の設立者として知られる大川博について解説。その大川がアニメーションに興味を抱き『白蛇伝』の製作を始動した理由についても分析がなされている。(萱間)
栗原詩子『物語らないアニメーション ノーマン・マクラレンの不思議な世界』(春風社、2016)
音楽史が専門分野である著者が、ノーマン・マクラレンの諸作品を専門的な観点で分析。それを元に、マクラレンの特異な音声収録をプレスコかアフレコかといったかたちで分類しており、これは今後のサウンド研究の一助となるだろう。(萱間)
松永伸太朗『アニメーターの社会学 職業規範と労働問題』(三重大学出版会、2017)
なぜアニメーターは自身の労働環境が過酷であることを知りつつ、それを受け入れるのか――この問いをめぐり、エスノメソドロジーという手法を用いて、社会学的な分析を行っている。膨大なインタビューデータを用いた労作。(萱間)
政岡憲三『政岡憲三『人魚姫の冠』絵コンテ集』(青弓社、2017)
政岡憲三が晩年にアニメーション化を構想していた『人魚姫の冠』の絵コンテとデッサンを掲載した資料的価値の高い一冊。解説は、政岡憲三研究に定評のある萩原由加里氏で、高畑勲監督によるエッセイも収録されている。(萱間)
津堅信之『新版 アニメーション学入門』(平凡社、2017)
『アニメーション学入門』(2005)に近年の動向を踏まえ大幅に加筆した新版。(萱間)
山村高淑『<普及版>アニメ・マンガで地域振興~まちのファンを生むコンテンツツーリズム開発法~』(PARUSBOOKS、2018)
『アニメ・マンガで地域振興』(2011)を普及版として再編集した電子書籍。(萱間)
小山昌宏・須川亜紀子『アニメ研究入門【応用編】:アニメを究める11のコツ』(現代書館、2018)
『アニメ研究入門』の応用編。入門編ではカバーしてなかった声優論、制作論、アニメーション史などをはじめ、学部、院生向けの論文集。(須川)
デナイソン、ライナ『Anime: A Critical Introduction 』(Bloomsbury、2015)
英国の映画研究者による、日本のアニメ紹介と分析。外国人の視点から見るアニメ研究が興味深い。(須川)
シートン、フィリップ『Contents Tourism in Japan: Pilgrimages to “Sacred Sites” of Popular Culture』(Cambria Press、2017)
コンテンツツーリズムの国際的な事象を網羅した英語の書籍。観光学、歴史学、文化学などの領域横断的なアプローチで考察している。(須川)
ラマール、トーマス『The Anime Ecology: A Genealogy of Television, Animation, and Game Media』(University of Minnesota、2018)
カナダのメディア研究者による、アニメ研究。テレビやゲームというメディアを通じて日本のアニメを分析している。(須川)
吉光正絵ほか編『ポスト<カワイイ>の文化社会学ー女子たちの「新たな楽しみ」を探る』(ミネルヴァ書房、2017)カワイイ>
カワイイが一般化した時代における女性文化を多角的に分析。アニメと歴女現象に関する論文がある。(須川)
ボルトン、クリストファー『Interpreting Anime』(University of Minnesota Press、2018)
日本のSFに軸を置く比較文学研究者による日本のアニメを題材にした研究書。宮崎駿、押井守、大友克洋などの作品を分析。メディア論というよりも文学研究者によるテーマ分析の趣であるが国際日本研究として深まりのある主要な成果の一つ。(中垣)
ブラウン、スティーブン『Cinema Anime』(Palgrave Macmillan、2006)
やや古い文献となるが日本文学研究者である編者によるアニメ研究の共著。Susan Napier, Thomas Lammarreをはじめ、SF・ポピュラーカルチャーを軸に国際日本研究を展開するSharalyn Orbaughら比較文学およびメディア文化の観点から日本アニメを捉える論文を収録。(中垣)
クレメンツ、ジョナサン『Anime: A History』(British Film Institute、2013)
アニメ歴史家による日本アニメ史。英国の映画研究を専門とする出版社による刊行物であり、英語圏での基礎文献の位置づけ。1980年代以降、海外での評価が高まっていく時代の記述を英語圏から捉える視点は参考になる。(中垣)
ガルブレイス、パトリック『The Moe Manifesto: An Insider's Look at the Worlds of Manga, Anime, and Gaming』(Tuttle、2017)
日本のサブカルチャーに造詣の深い著者による英語圏向けの「萌え文化」概説書。マンガ、アニメ、ゲームの領域を横断しながら現象を捉える手続きが見事であり、最新の情報としてのみならず執筆時点での時代状況を参照する際にも貴重な資料に。(中垣)
ネイピア、スーザン『Miyazakiworld: A Life in Art』(Yale University Press、2018)
『現代日本のアニメ』の著者による宮崎駿論。文学研究者である著者ならではの作家作品論であり、英語圏による宮崎駿研究の基礎文献となるであろうことからも国際日本研究の観点からもおさえておきたい研究書。(中垣)
ハーヒュース、エリック『Pixar and the Aesthetic Imagination: Animation, Storytelling, and Digital Culture』(University of California Press、2017)
米国でのアニメーション研究は歴史研究などで進展が見られる中でコンピューターアニメーション時代に力点を置く映画研究者による研究書。テクノロジーの変化がどのような変容をもたらしているのか産業構造にも目を向けている。(中垣)
文字テクストと映像テクストの間で、「想像力」がどのように伝播していくのかを考察している。特に前半部の、植民地主義的な思想が戦前の作品に見られるとしつつ、それが現在のアニメーションにも引き継がれた問題であるという指摘は重要。(萱間)