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ジョイスをアニメートする――ティム・ブースの『ユリーズ』

ポール・ウェルズによれば、アニメーション作家と、アニメーションによるテクストとのあいだの長期にわたる親密な関係性は、執筆のプロセスと似ている。アニメーションという形式が持つ技巧的感覚は、映画制作のために文学をソースとして用いるときに起こる変容的な側面に光を当てるのである。内面性、翻訳、そしてテクスト上のプロセスなどの表現こそ、ジェームス・ジョイスの『ユリシーズ』(1922)——複数の語り手が採用され、20世紀初頭の都市ダブリンの社会の表象を構築し解体していく小説——を映画化するのにアニメーションが完璧な手段となり得るゆえんである。この論文の目的となるのは、ティム・ブースの短編アニメーション『ユリーズUlys』(1998)についての考察だ。この短編は、ジョイスの執筆への言及であると同時に、ジョイスの小説の脚色でもある。本稿において著者は、『ユリシーズ』を補強する「イメージ・スキーマ」、そして、文学およびアニメーションによるテクストの両方に対する人間の認知に意味を与える「小さな空間の物語」を回復するため、ブースがアニメーションを利用することを考察する。

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