「_grau」――有機的な実験映画
実験映画『_grau』(ロベルト・ザイデル、10:01 min、ドイツ 2004)は視覚的に抽象化されたレベルで個人的な問題を扱う作品だ。これは、記憶、科学的情報の可視化、実際のデータから生み出された、複雑に絡み合うシステムを確立し、近代化されたヴァージョンの活人画を創出するとともに、生き生きとした超現実的かつ抽象的なイメージを扱う。同映画は、自然、芸術、テクノロジーによって鼓舞される有機的なイメージを創り出すため、進行段階にある研究の一部である。同映画のアイデアと霊感は、その成果物が時には「アイ・キャンディ」(見ると楽しいが、頭脳のいらない視覚映像)もしくは一種のスクリーン・セーヴァ―として認知されるが故に、断片的に明らかにされる。これは、ある程度、近代芸術の古典的な問題に関連しており、その際、抽象絵画は子供たちによって簡単に描かれ得ることがよく主張される。重要なのは、如何なるテクノロジーもそれ自体としては感情的経験を捉えるものではないと認識することだ。むしろ、芸術家のビジョンこそが、単なる奇麗な絵以上のものにその経験をかたちづくっていく。