この世界をアニメートする――ユーリー・ノルシュテイン『話の話』について
ユーリー・ノルシュテインの『話の話』(1979)は複雑な構造をしているが、監督の言葉によれば、この映画はとても単純な文に要約しうる――「私たちは生きている」
この説明は、「永遠」と名づけられたエピソードの分析によって理解しうる。このエピソードは、ノルシュテインが日常的な環境に生まれた絶対的な感覚の経験をしたとき着想された。彼はこのエピソードをシンプルなグラフィック・スタイルを用いて構成した。彼によるこのスタイルの利用は、あらゆる既存の観念を拒否する世界を描きたいがゆえのものであり、それを覗きみた人間が、その世界を何か新しいものへと変容させたかったゆえのものである。この映画を見ることでそれぞれの観客がその世界に新しい意味を付け加えることができたとき、生の感覚は蘇る。
『話の話』は空想的な世界を作りだす映画ではなく、この世界をアニメートするものなのである。