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『戦場でワルツを』における回想のアニメーションと鑑賞者としての経験

この論文は、アリ・フォルマンによる戦争回想録のアニメーション『戦場でワルツを』(2008)が、戦争の記憶への言及と道徳的立ち位置とのあいだにいかにして折り合いをつけたのかを探る。この映画は、アニメーション以外には表象することが困難もしくは不可能な題材を取り上げるに留まらず、観客とドキュメンタリー・テクストとのあいだに新たな可能性を育むツールともなりうるドキュメンタリー・アニメーションの可能性がの例証であるということを、本稿は論じる。この観点から著者が論証するのは、『戦場でワルツを』のユニークな美的選択――その革新的なアニメーション技術、そしてファンタジーとリアリティをミックスするやり方――が、観客に対して、作品の内部に、豊かで一貫し信頼するに足るリアリティの感覚を総合的に作りだすのを邪魔するどころか促進しているということである。そのために著者は『戦場でワルツを』の内容と形式の分析をその受容についての解説と合わせて行なう。そして、『戦場でワルツを』が個々人に対してある種の身体的反応を生み出すその方法について論じ、こういった反応が引き起こしうる政治的重要性について考察する。

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