マルチプレーン・カメラの立体感がもたらしたもの
1940年代、セルゲイ・M・エイゼンシュタインはディズニーのアニメーションを批判しているが、その理由として挙げたのがキャラクターと背景の描写の違いに対する違和感である。この違和感を生み出した原因の一つは、当時のディズニーがマルチプレーン・カメラを使用していたことにあったと思われる。本論文では、1930~40年代を中心とした、マルチプレーン・カメラとして同定できる使用例を取り上げる。それらは構造上、セル・アニメーションだけでなく、ミニチュア・セットを撮影することも可能であった。さらに、従来のアニメーション撮影とは異なる技術が求められることから、ミニチュア・セットや実写の撮影経験を持ったスタッフが必要とされた。マルチプレーン・カメラのミニチュア・セットや実写との接点が、アニメーションに立体感だけではなく、違和感をも、もたらしてしまったと考えられる。