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政岡憲三のリップシンクとその表象

『くもとちゅうりっぷ』(1943)と『桃太郎 海の神兵』(1945)は、アジア・太平洋戦争期の傑作として扱われてきた。そして、両作に関する研究が盛んになるにつれ、その政治的含意がさまざまな形で指摘されている。その一方で、これらに特徴的にみられるリップシンクについては議論されてこなかった。そこで本稿では、両作の制作に携わった政岡憲三に着目し、2つの問いを検討する。1つは、リップシンクがどのようにして取り入れられるようになったかである。この点については、フライシャーなどアメリカのアニメーションからの影響があった。もう1つは、『くもとちゅうりっぷ』と『海の神兵』におけるリップシンクが何を表象していたのかであるが、これは「大東亜共栄圏」の建設など政治性が強く関係していた。この2つの問いを考察することによって、戦前の政岡がアメリカの制作手法を模倣しつつ、輸入されたアメリカのアニメーションに対抗しようとしていたことを論じる。さらに、アメリカの作品の上映が禁止されたアジア・太平洋戦争期において、政岡は芸術性の高いアニメーションを制作することでアメリカに対抗しようとしていた。このような彼の思想と『海の神兵』の監督である瀬尾光世の思想とが、どのように異なっているかについても分析を行う。

  • タイトル(英語)
Kenzo Masaoka’s Lip Syncing and its Representations
  • 発表年
2018年
  • 著者
  • 関連作家
  • 関連作品
  • 掲載誌
アニメーション研究
  • 掲載誌巻号
19(2)
  • 掲載誌ページ
39-48
  • 掲載誌ウェブページ
https://doi.org/10.34370/jjas.19.2_39
  • DOI
10.34370/jjas.19.2_39
  • キーワード

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