直交3軸のうち1軸反転が生み出す形・動き知覚の歪み――不可能図形と影絵の回転による検討
M.C.エッシャーによる有名な不可能図形ベルヴェデーレは、左右方向に図形の下部を反転させれば実現可能なものとなる。そのことについては、梶川泰司が発見した。日本のメディア・ディレクター茅原伸幸は三角形の一辺を裏返すこと関係するもう一つの興味深い例を作っている。シルエット錯視と呼ばれるそれは、回転する人間の影でできている。後者の場合、前後の次元は反転によって起こるものの、観察者はそれを違った性質――たとえば回転方向の変化や(と)影絵の人物の仕草の反転――に帰する。これらの現象に基づき、われわれは常に反転を反転として感じるとは限らず、違った次元の反転や他の性質の変化にそれを見出すことがあることを論じる。