単一物体運動知覚に寄与する運動情報の因子分析的研究
本研究の目的は、単一物体の運動知覚に寄与する知覚的枠組みを明らかにすることである。そのための刺激として14種の単一物体アニメーションが用いられた。それらは、アリ、チョウ、魚のような生き物の様々な運動と、落下する風船、傾斜板上で転がるビー玉など物体の運動を参考に作られた。セマンティック・デイファレンシャル法を用いながら、女子短期大学からの参加者56名に刺激を21の尺度で評定させた。それぞれの尺度は、反対の意味を表わす形容詞対になっている。因子分析から2因子が抽出され、それぞれ「生物性因子」(寄与率64.0%)「動きの滑らかさと好ましさの因子」(寄与率28.4%)と名づけられた。分析の結果は、「生物性-無生物性」が単一物体における運動知覚の主な枠組みという証拠を提供する。