手塚治虫のリミテッド・アニメーションの技法の分析 ――『ある街角の物語』を中心に
『ある街角の物語』(1962)は手塚治虫(1928-1989)の最初のアニメーション作品である。ここでは、同作品の映像分析を通して、手塚のリミテッド・アニメーションの再評価を試みた。分析の方法としては、オープニングのいくつかのシークエンスを取り上げ、内容ではなく、そこで使われているアニメーションの技法の分析をした。さらに、「アトム誕生」(『鉄腕アトム』第一話、1963)他、手塚が影響を受けた作品、または同時代の作品として、『ピノキオ』(1940)、「宇宙からの訪問者」(『マイティ・マウス』のエピソード、1959)、そして『わんぱく王子の大蛇退治』(1963)を取り上げ、冒頭に使われている技法を分析、比較した。分析結果は、『ある街角の物語』で使われたリミテッド・アニメーションが単なる経済的な手段にとどまらないことを示している。手塚は様々な表現の可能性を追求し、本作品に美的価値を与えている。