アニメーションに魅せられたマンガの神様(前)
1989年に他界した“まんがの神様”手塚治虫とアニメーションとの、生涯に渡る関わりを、手塚自身の文章や発言を通して検証する。幼少時から家族と共に映画館に通っていた手塚は、戦前のディズニー作品にまず魅せられた。終戦間近に短期公開された国産長編アニメ『桃太郎海の神兵』に感動し、戦後まんが家として頭角を現すなかで、アニメーターになろうとしたこともあった。手塚まんがのなかにもディズニー作品などからの影響が多々認められ、執筆の傍ら映画館へと足を運ぶ日々が続く。1951年日本公開の『パンピ』に熱狂した時にはそのまんが化にも取り組み、当時執筆中だった「ジャングル大帝」の内容も変化したと手塚自身が語っている。さらに「漫画教室」「フィルムは生きている」といった、アニメーションへの傾倒が色濃く反映された手塚作品を筆者は紹介し、『ブラック・ジヤツク』の主人公の髪型と、『101匹わんちゃん大行進]』に登場するクルエラの髪型との類似を指摘。最後に手塚がみずから製作したアニメ作品にも触れて、彼より6歳年下の筆者ならではの感慨で最後をくくっている。