過去の恩恵を受けるのは誰か?ポーランドのアニメーション分野における文化遺産管理のプロセス(ウッチのセマフォル映画スタジオの場合)
社会主義下のアニメーション映画に対する1989年以降のアプローチと関係のある社会的制度的慣行を研究する目的で、本論文ではウッチにある国営のセマフォル映画スタジオから、のちにその名前を引き継いだ民間企業(セマフォル映画会社)への転換について取り組む。本研究の年代範囲は1989年から2016年におよぶが、1989年の転換期がポーランドのアニメーション市場に与えた影響を明確にするために、国家社会主義時代のアニメーション映画スタジオの運営様式も紹介する。本論文は文化遺産管理のプロセスが行われてきたその方法の問題だけでなく、どの遺産共有がウッチのアニメーション映画スタジオの記憶と機能しているのかという疑問にも取り組む。本論文が主張するのは、社会主義下におけるポーランドの映画産業の組織的および美的価値に賛同する姿勢が、この時代からポーランドのアニメーション映画の文化遺産管理にいたる戦略の特徴となっているということである。
結論として著者は、旧国営スタジオの文化遺産は商業化されたことによって、映画博物館とセマフォル映画会社という二つの機構の経済的象徴的資本となり、ひいてはウッチの街にも映画都市としてブランド化されるという恩恵をもたらしたと主張する。