チェコスロバキアのアニメーション黄金期から学ぶこと
チェコのアニメーターたちはチェコ・アニメーションの黄金期を復活させることができるのか? それとも、開かれた市場経済の変化に屈してしまうのか? 1989年以降、アニメーション・スタジオが私有化され、それに伴い政府からの財政的支援がなくなったことが、近年のチェコ・アニメーション衰退の主な要因のひとつとして共有されている。この論文が論じるのは、チェコのアニメーション製作にインパクトを与えた1989年以降の政治体制の変化と、それに結びつくその他の要因である。それらの要因には、(1)共通の敵と設定されていた共産主義体制の消滅に起因する主題の変化、(2)西側諸国からのアニメーション作品の輸入と新たな配給方法に伴うチェコ観客の断片化、(3)作家およびプロデューサーに対して金銭的成功の保証を求める経済的検閲がある。共産主義体制の時代およびそれ以降のチェコのアニメーション産業史を探るこの論文で、著者は、チェコのアニメーション作品が国際的評価を獲得し急激な成長を遂げることとなった1968年の「プラハの春」における状況を概観し、その状況と対をなすものとして、今日のチェコのアニメーション・スタジオに影響を与えている現代的問題も取り上げる。