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アニメの国のアリス:初期のディズニーアニメーションにおける小児期、ジェンダー、空想の世界

ミッキーマウスの変化自在な世界が1920年代後半から1930年代にかけて小さな子供からヨーロッパの映画制作者や哲学者まであらゆる人を魅了したのは有名だが、ウォルト・ ディズニーがメディア技術を使って小児期の自由な想像力を表現しようとした試みは、彼が初めて成功させたシリーズ「アリス・コメディ」(1923-1927)まで遡ることができる。これはアニメーションで表現された夢と空想の中の不思議の国を探検する少女を実写したもので、もととなったルイス・キャロルのキャラクターと同様、ディズニーのアリスも現代の合理的な生活と正反対の不合理で不思議な世界への架け橋の役割を果たしている。ディズニーはアリスを通して自分自身の文化作品を人々から長く愛されてきた児童文学に結びつけ、独自の視点でアニメ化した不思議の国を少女の無邪気な視点から見たものとして描いたわけである。このシリーズの冒頭では、遊ぶ子供たちを描いた実写ストーリーがきっかけとなってアリスがアニメの国に行き、子供から年寄りまで観ている全ての者を小児期の空想の世界への逃避に誘う。しかし、ディズニーは単に理想化された小児期を実写映画で描くだけでなく、アニメを使うことによって、誰の心にもある空想の世界へ手招きしたのだった。このような子供の視点を強調した実世界とアニメの世界の関係の描写は、当時の早期教育、精神的発育、および合理化が進む世界から小児期を守ることの大切さを取り巻くもっと大きな文化的懸念に訴えかける。本論文では、擬態、行動、「実」世界の転換など、子供の頃の遊びを実写とアニメーションの両方を用いてアリスの最初のアニメシリーズの中で表現したやり方を考察し、ディズニーの初期の作品のインパクトが理想化された小児期の空想ごっこを表現したメディア技術の力や子供の頃の感覚をよみがえらせるアニメの使い方によるところが大きいことを示している。

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