クエンティン・タランティーノ作品にみるマンガ的暴力
本稿は、2007年発行の『Animation: An Interdisciplinary Journal』第2巻第2号に登場するクエンティン・タランティーノの「カートゥーンニズム」の研究(「Tarantino the Cartoonist」)を再考するものである。クリス・パラントによるエッセイ同様、ここで焦点を当てるのは、どのようにマンガという物語の世界の慣習がタランティー作品 のアクションシーンで表現されているかということだ。つまり(1)誇張法、(2)グラフィックノベル、(3)コミック・ストリップで描写される暴力である。本稿では、パラントによる解釈の枠組みを採用し、タランティーノ作品の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)を分析するが、今回は作品の劇的な内容を考慮し、さらに補足的な分析を行っていく。アリストテレスの詩学をもとに、タランティーノ作品のマンガ的な暴力描写がいかにドラマに反比例的に関係しているかを調査し、さらにはマンガの形式が本質的にノン・ドラマチックあるいはアンチ・ドラマチックであるかについて、「個人的」および商業的なマンガ消費を通して推測する。