「ボクは髑髏も骨もないんだ」:ディズニーアニメーションのマイナーキャラクターたち
本稿ではディズニーの長編アニメーションにおけるマイナーキャラクターの位置付けを検討する。より具体的には、ディズニーの長編アニメーションと関連づけられてきたハイパーリアリズム様式と決別することで、マイナーキャラクターの美学的断絶を示すことを提案する。本稿では、文学研究におけるキャラクター理論とアニメーション映画のパフォーマンスの研究をもとに、ディズニーのマイナーキャラクター固有の「平面性」と「形象的」なパフォーマンススタイルが、メインキャラクターの持つ特徴と美的スタイルと対照的であることを示す。ディズニーのマイナーキャラクターにみられる誇張された形で引き伸ばされたり潰されたりする(stretch and squash)傾向は、ディズニー初期の柔軟かつプラズマのように自由に動くスタイルを彷彿とさせる。マイナーキャラクターの持つ美的な特徴を探ることに加え、本稿では、ディズニー映画の架空の世界を肉付けするうえで重要な役割を果たしていることについても言及する。マイナーキャラクターは、代替的な視点やストーリーライン、さらにはより広範囲な物語の世界に焦点を当てることで、アニメーション映画にディテール、ニュアンス、複雑性を加えているのである。最後に、これらのマイナーキャラクターによって、ディズニーのおとぎ話の世界がフィクションの空間としてより拡大し、その信ぴょう性を高めていることを本稿で示す。