バットマンと未来の世界: アニメーション映画『バットマン/マスク・オブ・ファンタズム』にみる過去の未来予想図
アニメーション映画『バットマン/マスク・オブ・ファンタズム』(1993年)に描かれる最先端の未来像や脚色された都市と舞台空間。本稿では、これらのモダニスト的ビジョンが持つ側面を考察しながら、グラフィック・フィクションにおけるテクノロジーの持つ文化的意味を探る。ゴッサム・シティの万博博覧会会場でのバットマンとジョーカーの直接対決のシーンは、1939年のニューヨーク万博博覧会と同様にモダニスト的都市の楽観主義と最先端のテクノロジー、近代的な映画、マルチメディア・スペクタクルに対するポップカルチャー的魅力があると著者は主張する。本稿は、バットマンのストーリー性が持つ力に光を当てることで、 テクノロジーと大衆エンターテインメントにおける複雑な文化的探究とトランスメディア・ディスコースへの貢献を図るものである。キャラクターの舞台を抽象的な建築都市にすることが可能なアニメーションという優れた媒体を通して、『マスク・オブ・ファンタズム』は「理想的な」舞台キャラクターのモダニスト的ビジョンを体現している。非現実的なアートを生み出し、より複雑なキャラクターの動きを実現できるアニメーションを使うことで、モダニスト的思考を20世紀に反映させているのである。