『テコンV』(1976年)にみる1970年代韓国の社会的・政治的状況
初期の韓国アニメーションの名作の一つでもある映画『テコンV』は、公開当時の1970年代後半から韓国人の若者世代に夢と希望を与えてきた。一方で一部の評論家は、『テコンV』がアメリカのポップカルチャー、特にディズニーのアニメーションスタイルに影響を受けており、日本で人気のアニメであった『マジンガーZ』を盗作したと非難している。1970年代、韓国政府は軍事政権による反共政策を背景に「国家の近代化」のための経済開発を積極的に推進していた。反共主義の道具として制作された『テコンV』は、戦後の韓国のナショナリズムを追求し、韓国の国力に自信を持つよう後押しした。その後、韓国は急速な経済成長を遂げた。こういった社会的・政治的状況は、「巨大ロボット」という姿や韓国人のキャラクターの容姿が韓国人的でないことにも表れている。このような側面を考慮し、著者は『テコンV』がどのように戦後の複雑なイデオロギーの枠組みを乗り越え、海外文化の影響を取り込みながら、キャラクターデザインと物語を通してトランスナショナリズムを示していったのかを考察する。