丹念な作りでありながらも不思議なほどリアル:アメリカの大手アニメーションスタジオによる共通のキャラクターデザインを通して共感を呼ぶ方法論
アメリカの大手アニメーションスタジオ・ピクサー、ディズニー、ドリームワークスによる近年のコンピュータアニメーション映画作品は、観客の(非常に強い)感情を呼び起こす作品だといわれており、その観客数も年々増加している。著書『Engaging Characters: Fiction, Emotion, and the Cinema(魅力的なキャラクター:フィクション、感情、そしてシネマ)』(1995年)内で、観客と物語のつながりを理解するうえで鍵となるのはキャラクターであるというマレー・スミスの主張に続き、本稿ではキャラクターの描写スタイルが強い情動を引き出し、映画がヒットする理由になり得ると考え、『インサイド・ヘッド』(ピート・ドクターおよびロニー・デル・カルメン監督、2015年)、『ベイマックス』(ドン・ホールおよびクリス・ウィリアムズ監督、2014年)、『ヒックとドラゴン』(クリス・サンダーズおよびディーン・デュボワ監督、2010年)などの現代の作品に例示されるキャラクターの描写スタイルに注目する。本稿では、スティーヴン・プリンスの「知覚的リアリズム」、スコット・マクラウドの「単純化による増幅」というモデル、森政弘の不気味の谷現象などのさまざまな学術的研究を踏まえ、生きた人間のようなリアルさと抽象化の逆説的組み合わせとして定義されている共通のキャラクターデザインが、どのように映画に対する共感性を生む役割を果たしているのかについて論じる。これにより、「ピクサーピーク」と呼ばれる森の不気味の谷現象とは逆の新現象が起こる。急降下とは対照的に、この現象では特定の共通のキャラクターデザインが見られるときに観客の共感レベルが頂点に達する。