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『ザ・シンプソンズ』において時間はどのように働くか

本論文では、2グループのケーススタディエピソードを利用し、『ザ・シンプソンズ』の中で「フローティングタイムライン」を長期にわたり使用することから生じる複雑性と難局を探る。第一に、2つの'flashback'(フラッシュバック)エピソード(「パパとママの恋物語(The Way We Was)」および「ザット'90sショー(That 90's [sic] Show)」)でのホーマーとマージにみる若者の矛盾した表現を検討する。フローティングタイムラインから離れ、個々のエピソードで定着している(が、複数あり矛盾がある)歴史的な参照ポイントを紹介することによって示される必然的な困惑の輪郭を描く。そのうえで、それらを解決しようと試みるよりはむしろ、作り出された虚構のパラドックスを受け入れる方がよいことが示唆される。第二に、「サイドショー・ボブ」を主役とするエピソードを調査する。ボブは、時の流れを経て、波乱に富んだ歴史を積み重ねて抱えるという並外れた能力(『ザ・シンプソンズ』の虚構の世界の中で)を与付与されたという設定になっている。これは『ザ・シンプソンズ』自体の時間的経験と対比され、進むことのない波瀾万丈さがある。本論文は、アニメーション番組としての『ザ・シンプソンズ』のステータスは、シチュエーションコメディーやテレビの時間、歴史、日常の関係をもっと広げ、特に純粋で持続的な形で見せることができることを示唆して結論づけている。

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