森川嘉一郎『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』(幻冬舎、2003)
90年代末から2000年代初頭にかけて、なぜ秋葉原がオタクの聖地へと変貌したのかを、オタク文化論と都市論から徹底的に検証した書。「趣味」が都市空間を変え、聖地を生むプロセスを読み解いた名著。
柿崎俊道『アニメ聖地巡礼』(株式会社キルタイムコミュニケーション、2005)
「アニメ聖地巡礼」ブーム到来前、いち早く、アニメやマンガのモデルになった場所を巡る行為を「聖地巡礼」と呼んでムーブメントを開拓した書。宗教的聖地との本質的共通点を突いた記述はまさに慧眼。
増淵敏之『物語を旅するひとびと~コンテンツ・ツーリズムとは何か』(彩流社、2010)
「アニメ聖地巡礼」を含む「コンテンツ・ツーリズム」に関して体系化を試みた内外初の書。アニメの他、TVドラマ、小説、Jポップも射程に捉え、コンテンツ・ツーリズムというアプローチの可能性を一気に広げた良書。
山村高淑『アニメ・マンガで地域振興~まちのファンを生むコンテンツツーリズム開発法~』(東京法令出版、2011)
2007年ごろから活発化したアニメと地域とのコラボレーションの課題と可能性を、具体的事例を通してまとめた書。当時の製作者、地域住民、ファンという三者の思いが詳細に記されており、記録資料として活用可能。
白石さや『グローバル化した日本のマンガとアニメ』(学術出版会、2013)
日本のアニメ・マンガが越境し、世界で発見・受容されるプロセスを、20年に渡る調査から描いた書。聖地論ではないが、当世流行りのアニメを活用したインバウンド振興を考える上で示唆に富む。
岡本健『n次創作観光 アニメ聖地巡礼/コンテンツツーリズム/観光社会学の可能性』(NPO法人北海道冒険芸術出版、2013)
「アニメ聖地巡礼」が「他者とのコミュニケーションのあり方にどのような役割を果たすのか」分析した観光社会学の書。著者の博士論文をベースとした学術書だが、わかりやすい筆致・構成で、学生の入門書に最適。
岡本亮輔『聖地巡礼 世界遺産からアニメの舞台まで』(中公新書、2015)
気鋭の宗教社会学者による「聖地巡礼」論。宗教学をベースとしつつ、宗教的聖地からアニメ聖地までを体系的に論じ、現代社会が聖なるものや聖地に求める意義、信仰や祈りの多様性を浮かび上がらせた良書。
Sue Beeton, Film-Induced Tourism 2nd edition, Channel View Publications, 2016
映像作品がきっかけとなったツーリズムについて、最もわかりやすく体系化された書。1st editionでは記載のなかった、日本におけるコンテンツ・ツーリズムの動向についても加筆。アニメ聖地巡礼を国際的観点から理解できる。
Philip Seaton et.al, Contents Tourism in Japan: Pilgrimages to “Sacred Sites” of Popular Culture (Cambria Press, 2017)
日本におけるポップカルチャーの聖地とそこで展開するツーリズムについて、その歴史から最新動向までの体系化を試みた書。日本だけではなく、国際的にも適用可能なコンテンツ・ツーリズムの定義・アプローチを提唱。
宗教人類学者による聖地論。神話や宗教の事例を取り上げつつ、「聖地には世界軸が貫通しており、記憶装置として機能する」との論を展開するなど、アニメ聖地研究にも応用可能な視座を多く提示している。