柳井義男『活動写真の保護と取締』(有斐閣、1929)
映画検閲のための理論書で、漫画映画の地位が低かった時代に、映画全体のなかでアニメーション(描画と呼ばれた)を体系的に位置づけている。文化統制下のアニメーションを考えるうえで無視できない本。
今村太平『漫画映画論』(第一芸文社、1941)
いわずとしれた名著。映画音楽に対する関心から漫画映画に向かった今村は、どの評論家とも異なる独自な視点でアニメーションを論じた。第一評論集の『映画芸術の形式』も重要である。
田中純一郎『日本教育映画発達史』(蝸牛社、1979)
日本の漫画映画史は映画史の一部であった。田中や飯田心美ら、戦前から活動する映画評論家が記述したのが最初だろう。『日本映画発達史』にも漫画映画史が記述されているが、こちらのほうが詳しい。
森卓也『アニメーション入門』(美術出版社、1966)
森は、日本で最初のアニメーション評論家と呼ぶことができる人物である。アニメーションとはなにかを問いかけた評論家であり、1960年代の日本にアニメーションの概念が定着するうえで大きく貢献した。
山本瑛一『虫プロ興亡記―安仁明太の青春』(新潮社、1989)
安仁明太を主人公にした自伝的フィクションで、虫プロダクションの創立から倒産までがリアルに描かれている。不可能な納期を可能にする狂気のようなウルトラ・ブラックな現場。
山口且訓・渡辺泰『日本アニメーション映画史』(有文社、1977)
日本アニメーション史の金字塔。この本を読まずして日本のアニメーション史は語ることができない。刊行後、次々と新しい事実が明らかになったが、本書の内容を補っていくのが後進の研究者の役目だろう。
大塚康夫『作画汗まみれ[改訂最新版]』(文藝春秋、2013)
東映動画のアニメーター一期生の回想録。東映動画からスタジオジブリに至る、正統なアニメーションの流れをたどることができる。フルアニメーションに価値を置く商業アニメーションの成果。
日本アニメーション協会『12人の作家によるアニメーションフィルムの作り方』(主婦と生活社、1980)
協会の会員がアニメーションのつくり方を解説した本。手塚治虫や川本喜八郎の他、古川タク、相原信洋、田名網敬一ら自主制作アニメーションの作家がさまざまな技法の解説していて興味深い。
津堅信之『日本アニメーションの力 : 85年の歴史を貫く2つの軸』(NTT出版、2004)
手塚治虫と宮崎駿という二大巨匠を軸にして読み解く日本のアニメーション史。ひとつの見方として重要である。個人アニメーション作家も取り上げられているが、この部分は貧弱。
アニメーションに関する記述は少ないが、その少ない記述が明治時代のアニメーションを考えるうえで大きな意味をもつ。漫画映画という言葉すらなく、アニメーションとトリック映画が未分化な時代の貴重な記録。