程斯「『カセットJUNE』が構築した聴取経験とそれをめぐる聴き手との交渉に関する一考察」(『アニメーション研究』23(2)、2023、29-39)
1980年代の「第二次アニメブーム」や「やおいブーム」の影響を受けた女性向けコンテンツ「カセットJUNE」を分析し、カセット『鼓ヶ淵』と『間の楔』が提供した新たな聴取経験と、聴き手のコメントを通じて生まれた交渉の場としての役割を探る。
湯天軼「『恋声』の研究 : 中国における日本声優とその声の受容をめぐる考察」(『コンテンツ文化史研究』12、2021、18-34)
中国のオーディエンスが日本語を話す声優の声に恋する「恋声」の現象から中国における日本声優の受容状況を整理し、受容者がどのように声優の声をイメージとして受け入れているかを考察する。これにより、日本語音声に「恋」させる理由と、サブカルチャー経験との関係を探る
ブリッジス、ローズ『「カウボーイビバップ」のサウンドトラック 菅野よう子と渡辺信一郎の音楽作劇術』(DU BOOKS、2024)
菅野よう子や渡辺信一郎監督をはじめとするサウンドトラック制作陣への取材を通じて、音楽がどのようにキャラクターの内面や物語の進行と融合するのかについて考察し、サウンドトラックの制作過程にも迫る。
Pellitteri, Marco(ed). The Palgrave Handbook of Music and Sound in Japanese Animation, Palgrave, 2024.
日本、イタリア、アメリカなど多国籍の学者による日本のアニメ音楽と音響についての研究を網羅した学術論集。戦前の長編アニメーション映画、戦後のテレビアニメシリーズにおける音楽、音、声の発展を扱う論文40篇、インタビュー2篇、80人の作曲家基礎情報を提供する辞書的一冊。
Jocoy, Stacey. Mechademia: Second Arc, Vol. 13, No. 2: Soundscapes, University of Minnesota Press, 2021.
アニメにおける音楽、音響、そしてサウンドデザインに焦点を当てて、音楽と音がアニメにおける視覚的要素とどのように結びつき、物語やキャラクターにどのように深みを与えるのか、さらにはアニメにおける音楽の文化的影響を探る多くの研究を収録している。
Snell, Merrie. Lipsynching, Bloomsbury Publishing, 2020.
録音によって歌声が身体から切り離される意味と、それが消費者に与える影響を探る。リップシンクの実践を通じ、録音された音楽が商品を超え、自己認識や創造性の手段としてどのように活用されているかを考察する。
Redmond, Ryan. "Sounds Like Misogyny: Voicing Cross-gender Roles in Anime and Discourses Surrounding Female Fandom on 2channel", Mechademia: Second Arc, 13(2), University of Minnesota Press, 2021, 102-119.
批判的談話分析(CDA)とクィア理論を通じて、女性声優が男性キャラクターを演じる現象を分析し、彼女たちの受け入れられ方や、女性ファンがその活動に与える影響を考察する。また、日本の大衆文化における性別の役割も探る。
Yamamura, Takayoshi. "Perspective Chapter: Voice as Pop Culture Content - Trans-Media, Transnational, and Cross-Language Consumption of Japanese Voice Actors", Comics and Graphic Novels - International Perspectives, Education, and Culture, IntechOpen, 2024, 45-56.
日本の声優を中心にしたトランスメディア、トランスナショナル、クロスランゲージ消費現象を調査し、コンテンツツーリズムと経験経済の枠組みを用いて、消費現象の社会文化的背景とその普及を明らかにする。
Brophy, Philip. "Extra-Musical Sonic Environments / 2: Sonic Embedment and Spatial “Worlding” Soundscapes, Psychoacoustics, and Post-Human Sonics in Shinseiki Evangelion", The Palgrave Handbook of Music and Sound in Japanese Animation, Palgrave Macmillan, 2024, 505-533.
アニメ作品における音の風景を分析し、音響設計や心理音響学、ポストヒューマンを扱う作品における音の役割を探る。また、戦後日本の都市計画や伝統的な舞台芸術(歌舞伎、能、狂言)の遺産を考慮し、音の記号論を議論する。
須川亜紀子『2.5次元文化論―舞台、キャラクター、ファンダム』(青弓社、2021)
2.5次元文化の歴史を概観し、アニメミュージカル『聖闘士星矢』から2.5次元舞台作品『ハイキュー!!』に至るまで、様々な2.5次元舞台やミュージカル作品の歴史、理論、ファンダムに焦点を当てている。
須川亜紀子ら『2.5次元学入門』(青土社、2024)
2.5次元コンテンツ研究の重要な課題への基礎的な導入として、この論集は、舞台やライブコンサートにおけるキャラクターと身体の複雑性、そして国内外の2.5次元ファンダムに焦点を当てている。
山野弘樹『VTuberの哲学』(春秋社、2024)
VTuberを哲学的対象として、実在性と虚構性、アイデンティティ、身体性、芸術形式といったテーマに関連づけて検討し、VTuberは2次元や3次元に還元できない「制度的存在者」であると主張している。
岡本健ら『VTuber学』(岩波書店、2024)
VTuberをビジネスモデル、エンターテインメント、身体性など、さまざまな視点から取り上げ、作家の塗田一帆氏やActiv8、カバー、Brave groupの主要人物へのインタビューも収録されている。
ジェンキンズ、ヘンリー『コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化』(晶文社、2021)
メディア研究における参加型ファン文化の基礎的な理論を、『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』などの様々な海外作品に対するファンの参加のダイナミクスを分析することで提供している。
Sugawa-Shimada,Akiko, et al. Mechademia: Second Arc Vol. 15.2: 2.5D Cultures, 15(2), University of Minnesota Press, 2023.
英語圏におけるアジアのポップカルチャーに関する主な学術誌『Mechademia』の第15巻第2号では、VTuber、キャラクター彫刻、声優コンサートなど、様々な視点から2.5次元文化が論じられている。
川村覚文『情動、メディア、政治: 不確実性の時代のカルチュラル・スタディーズ』(春秋社、2024)
現代文化や政治との関わりを理性ではなく感情的反応として捉え、『ラブライブ!』や『ハイスクール・フリート』といったメディアが生み出す感情性を検討し、ポストヒューマン的メディアエコロジーの可能性を探る。
岩下朋世『キャラがリアルになるとき ―2次元、2・5次元、そのさきのキャラクター論』(青土社、2020)
キャラクター論を構築し、『BUYUDEN』や『島耕作』のような漫画の描写や、『テニスの王子様』や『弱虫ペダル』のような2.5次元舞台ミュージカルにおけるキャラクターのリアルさや人間性を主張している。
Annett, Sandra. The Flesh of Animation: Bodily Sensations in Film and Digital Media, University of Minnesota Press, 2024.
ディズニーやアニメ、ボーカロイドなど多様なアニメーションメディアを検討しながら、現代メディアの身体性を分析する現象学的アプローチを提示し、アニメーション性が身体的な感覚を喚起するものと主張している。
Berndt,Jaqueline, et al. The Cambridge Companion to Manga and Anime, Cambridge University Press, 2024.
相互に関連するメディアであるアニメとマンガの類似点と相違点を探求し、制作、流通、受容の日本国内外での状況や、メディアの歴史、スタイル、物語、キャラクター描写など、さまざまなトピックを分析している。
占領期のラジオドラマからはじまり、少年を演じる女性声優を軸にアニメと声優の歴史を探り、アニメと声優がどのように交錯し、発展してきたのかを追いながら、日本が独自に育んできたアニメと声の文化を論じる一冊である。