伴野孝司・望月信夫『世界アニメーション映画史』(ぱるぷ、1986年)
アニメの歴史研究家の伴野と故・望月のコンビが徳間書店の月刊誌『アニメージュ』に連載した「世界のアニメ史」を大幅改定。新たに加筆された世界各国のアニメの歴史は現在でも資料的価値は大きい。
五味洋子『アニメーションの宝箱』(ふゅーじょんぷろだくと、2004年)
かつて同人誌『FILM 1/24』の編集長だった五味(旧姓富沢)が自分の見た過去の内外長短編アニメについて、えこひいきなく公平な視点で作品評価されていて好感が持てる。毎日映画コンクールのアニメ部門「大藤賞」も取り上げている。
トム・シート著、久美薫訳『ミッキー・マウスのストライキ! アメリカアニメ労働運動100年史』(合同出版、2014年)
日本に限らずアニメ制作会社のストライキは恥部として隠される。著者シートはかつてディズニーのアニメーターだったが、フライシャーやディズニー・スタジオのストライキの裏面の歴史に初めてスポットライトを当てた。
西村智弘『日本のアニメーションはいかにして成立したのか』(森話社、2018年)
著者の専門分野は美術と映像史。1917年の日本アニメ誕生から現在の隆盛までを日本に輸入公開された外国アニメと比較しながら、興行面のヒット作品だけでなく前衛的、実験的な作品まで取り上げて日本アニメの歴史を語る
今村太平『漫画映画論(初版)』(第一芸文社、1941年)
日本で初めて出版されたアニメの文献として資料性価値は高い。映画ファンの今村は東京に出来たニュース映画専門館に通い、ディズニー短編アニメやフライシャーのアニメを分析評価。最初にアニメに注目した功績は大。
萩原由加里『政岡憲三とその時代 「日本アニメーションの父」の戦前と戦後』(青弓社、2015年)
政岡の家計は裕福な地主で、美術学校で絵画を学ぶが、映画に魅了され映画制作に転向。日本初のトーキー・アニメ及びセル・システムを導入。アニメ制作の合理化を実行。萩原の著作は美術界の政岡とアニメ開拓の業績を評価。
横田正夫『大ヒットアニメで語る心理学』(新曜社、2017年)
日大心理学教授の横田は心理学の見地からヒットアニメを分析。『君の名は。』『この世界の片隅に』『アナと雪の女王』などの他に故・高畑勲の『太陽の王子 ホルスの大冒険』の難解な「迷いの森」の場面を心理学の立場から解明した。
高畑勲『漫画映画(アニメーション)の志―「やぶにらみの暴君」と「王と鳥」』(岩波書店、2007年)
故・高畑の著作は多いが、1955年に仏アニメ『やぶにらみの暴君』を見て感激。東映動画に演出として入社。アニメ監督のきっかけとなった『やぶにらみの暴君』とリメーク版『王と鳥』を克明に分析した唯一の文献である。
星まこと編『伝説のアニメ職人(クリエーター)たち(第1巻)』(まんだらけ出版部、2018年)
編・著者の星はアニメ制作者でも著名な宮崎駿などは除外し、名声こそ得られないが、陰の立場で日本アニメに貢献したアニメ作家たちを発掘しスポットを当てている。東映動画初の原画家として活躍した大工原章の頁が秀逸。
アニメ・映画評論家の森が1962年9月号~’63年10月号まで『映画評論』誌に連載した「動画映画(アニメーション)の系譜」の総集編だが、白眉と言えるディズニー・アニメ論がディズニー側の検閲で全面カットされたのが惜しまれる。