宮崎駿作品のアメリカにおける浸透過程
本稿は、アニメーション界の巨匠として世界的に認められている宮崎駿のアニメーション映画がアメリカでいかなる受容のプロセスを経て現在の地位を獲得するに至ったのかを考察する。従来、作品と無関係なものとして扱われてきたビデオソフトのパッケージ・デザインを比較分析しアメリカにおける販売戦略を読み取る。また作品の内容がアメリカ社会に受け入れられやすいようにするためどのように変更されたかを分析する。宮崎駿の映画は、異なった文化環境で検閲、編集、現地化などの壁を乗り越えアメリカの映画界に影響を及ぼす存在にまでなっている。このプロセスの中では配給会社、ファン、評論家がそれぞれ大きな役割を果たしている。本論文は、英語圏において宮崎の作品世界への認知が広がりながら、宮崎が映画作家としての地位を確立していくと同時に、日本の伝統的な価値観の一部がアメリカのポピュラーカルチャーに影響を与えていることを提案する。