片隅から世界を眺める――「遠い」現実を「近い」ものとするアニメーションについて――
アニメーション・ドキュメンタリー隆盛の背景には、アニメーションそのものが捉えうる現実感覚の変容がある。ユーリー・ノルシュテインやキャロライン・リーフをはじめ、アニメーションに、個人が抱えるパーソナルなリアリティを映像化するメディアとしての適正を見いだす非ドキュメンタリー作家たちが、パーソナルな観点で捉えられた世界をアニメーション化するとき、その世界観が包括する範囲のあまりの「近さ」「狭さ」は、逆説的に、その彼らの世界に属さない(ときには彼らの世界を脅かし疎外する)「遠い」現実世界の存在をほのめかす。それらの作品における世界を片隅から眺めるような描写は、たとえば、アニメーション・ドキュメンタリーが、マイノリティをはじめとする他者と共有しえないリアリティを捉えようとするとき、共通点をもつようになる。