音の粒:『Sand or Peter and the Wolf』にみる視覚と音の質感
アニメーション研究には、音を画像言語で語る傾向があり音と視覚的手がかりの同調を強調するものである(ミッキーマウシングや ライトモティーフ)。しかし音とは単に映像を模範するだけではない。音は、目に見えるものを変えるような質感や感情も運ぶのだ。本稿では、視覚的・音響的素材が持つクオリティとしての粒(質感)と音色(特定の楽器や技法によって作られる音色)について探る。このために著者は、キャロライン・リーフが音と砂のアニメーションを使ってマイケル・リースマンの電気音響スコアと同調する作品、『Sand or Peter and the Wolf(砂またはピーターと狼)』(1969年)を綿密に調べた。リーフは、砂の一粒一粒を取り除いて丁寧に動物を形作っていき、リースマンはブックラのモジュラーシンセサイザーのノブとタッチ・センシティブパッドをわずかに調整して音の質感を削っていく。砂と音を使って互いに即興演奏をする姿は、素材を使ったアーティストの動き、不和、そして映像と音のインタープレイを新たな視点で考える方法を示してくれるものだ。彼らは動物を単なるプラズマ、あるいはセルゲイ・エイゼンシュテインのキャラクターアニメーションの概念である原形質性とは離して認識するように観客に促し、代わりに「顆粒状の変調」と著者が呼ぶものを展開する。感覚的物質性を使って、砂と動物を表現するのである。音と視覚がどのように共存し、アニメーションで不和を生むかを理解するための鍵となるのが、リーフとリースマンの即興内の粒子の粗い質感である。