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『リメンバー・ミー』のように感動的な死後の世界

本稿は、近年公開された死後の世界を扱うフィクション作品におけるピクサーのCGアニメーション『リメンバー・ミー』(リー・アンクリッチおよびエイドリアン・モリーナ監督、2017年)の位置づけを行い、なぜこのような物語が現代の人に響くのか、その理由を探る。この答えは、ユートピアという考えに基づいていると著者は考え、『リメンバー・ミー』の中にみられるユートピア的空間と理想を特定する。死後の世界を描いたフィクション作品は、登場人物と観客を内省的な場所、つまり人生を死後のものとしてではなく生きているものとして考える場所に誘うものである。古典的なハリウッドのミュージカル作品をエンターテイメントのユートピアを位置づけるというリチャード・ダイアーの研究を、本稿ではエンターテイメントをアニメーションのミュージカルに置き換えて考える。その上で筆者が考えるのは、このような映画は「映画の中に新たに光る誠実性」を忠実に守っていると見なすことができるということだ。『リメンバー・ミー』で描写される死者の日のお祭りと死者の国のもととなったのは、メキシコ人作家オクタビオ・パスによる詩的かつロマンチックな著書『孤独の迷宮』(1950年)である。これらを比較すると、死に自ら歩み寄る姿勢は、恐怖心のない生と死の行き来に関係していることがわかる。観客を自らの感情と変遷のユートピアに誘うために、どのようにミュージカルの特性とアニメーションの美学(ベビースキーマやバーチャルカメラ)が組み合わされているのかを、『リメンバー・ミー』の鍵となる劇中歌を詳細に調べ示していく。

  • タイトル(英語)
The Afterlife as Emotional Utopia in Coco
  • 発表年
2020年
  • 著者
  • 掲載誌
Animation: An Interdisciplinary Journal
  • 掲載誌巻号
15(2)
  • 掲載誌ページ
179-192
  • 掲載誌ウェブページ
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1746847720937443
  • DOI
10.1177/1746847720937443

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