小画面で修復するパノラマ:ソフトウェアで作成したパノラマ写真におけるスケール、動き、傍観者の視点
本論文では、ユーザーが小画面デバイス(ノートパソコン、携帯電話、タブレットPC等)を使ってパノラマ写真を撮ったり探したりできるソフトウェアを使ったデジタルパノラマの一連のサービス(著者が言うところの「小画面パノラマ」)を検討し、パノラマのアルゴリズム的視点と動きがデジタル化前のスケールや機動性を修正する新たな視覚方法の出現を示唆していると論じる。デジタル合成技術は、ある場所の個々の写真をひとつにまとめ、没入型の傍観者視点を提供する360度シームレスの視野を作成することで、現代性に対する旅行者的パノラマ目線の知覚や認識論的条件を復元する。しかしその一方、このアプリケーションは、技術的特性がノートパソコンや携帯電話の携帯性やアプリケーションのアルゴリズムによる2D写真の効率化などのモバイルメディアの傍観者的視点の具現化された本質的・偶発的な側面を有効化することで、従来のパノラマの視界と傍観者視点を損なってしまう。これらの例は、シームレスな仮想3D画像を作成しようとするアプリケーションの試みにもかかわらず、動画と静止画、没入型と小型化、具体化と非具体化という矛盾の共存につながることを示していると著者は述べている。