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日本のアニメーション研究黎明期を支えた10+xの文献

小出正志

当初「日本のアニメーション学を形成してきた10の文献」を考えたが、1980年代初めに至る黎明期に参照された文献と改めた。(1)1960年代前半迄の訳書を含む当時“古典的”位置付けのもの、(2)アニメーションプロパーが基本図書とし伝説的なF&FFなど同人の流れにあるもの、(3)実験映画・実験アニメーション、創作関連、(4)映画史・アニメーション史関連、(5)基盤の一つ映画学・映像学の文献の5グループ(+xは書名のみ)。

1-1. 今村太平『漫画映画論』(原著:第一芸文社、1941年/復刊:真善美社、1948年;音羽書房、1965年;ゆまに書房、1992年;岩波書店、1992年;徳間書店、2005年)

古い著作で引用されることも多くはないが、日本のこの分野の研究では避けて通れないクラシックスと位置付けられる。何よりあの時代にアニメーションの本質や可能性を真摯に論じたことに名状し難い深い感銘を覚える。

1-2. ジョン・ハラス,ロジャー・マンベル『アニメーション 理論・実際・応用』(伊藤逸平訳、東京中日新聞出版局、1963年/復刊:ダヴィッド社、1974年/原著:Roger Manvell, John Halas, Technique of Film Animation, Focal Press, 1959)

専門書の少ない時代に初学者がまず手にした。原題に「Technique of」とあるように制作技術や形式・技法の解説に重点を置くが、アニメーションの本質を論じ、特に技術や形式の側から考える際は示唆に富む。

2+x 『FILM 1/24』(アニドウ、1976年5月[新版第8号]〜1984年7月[新版第32号])

3-1. シェルドン・レナン『アンダーグラウンド映画』(波多野哲朗訳、三一書房、1969年/原著:An Introduction to The American Underground Film, Dutton, 1967)

映画との関係性や短編作品、作家性、商業—非商業の問題など、実験映画にも視野を広げる必要があるが、これは初の本格的な実験映画の書。理論面での弱さはあるが資料性に富み、アニメーションの概念規定にも示唆的。

3-2. Robert Russett, Cecile Starr, Experimental Animation: an Illustrated Anthology (Van Nostrand Reinhold, 1976 / Reprint edition: Experimental Animation: Origins of a New Art, Da Capo Press, 1988)

実験アニメーションに関する専門書として最重要なものの一つ。アニメーションの概念の検証や拡張にも、また芸術性と商業性、個人性と集団性、作家や作品を考える上でも、実験アニメーションは重要な研究課題となる。

4-1. G. サドゥール『世界映画史』(丸尾定訳、みすず書房、1964年;『世界映画史1』、1980年)/旧訳版:岡田真吉訳、白水社、1952年/原著:Histoire du cinéma mondial, des origines à nos jours 9e éd., Flammarion, 1972

アニメーションが“アニメーション映画”だった時代、映画は特に参照され意識する必要があった。広く世界的な視野で映画史を一巻で扱う書として定評がある。極僅かなアニメーション映画に対する記述にも含蓄がある。

小出正志(こいで・まさし)
東京造形大学教授

1982年 東京造形大学造形学部デザイン学科卒業(映像専攻)。1988年 東京造形大学着任。専門はコミュニケーションデザイン、映像学、アニメーション研究。日本アニメーション学会会長、日本アニメーション協会理事、インターカレッジアニメーションフェスティバル実行委員、新千歳空港国際アニメーション映画祭実行委員長。ソウル国際カートゥーン&アニメーション映画祭審査員、文化庁メディア芸術祭審査委員などを歴任。

関連リスト

戦前は今村太平の『漫画映画論』が唯一のアニメーションの文献だったが、最近は読むべき文献も増えた。資料的よりも筆者が時に興味深く読んだ文献を推薦させてもらった。選んだ10冊のほかにもL.マルティンの『マウス・アンド・マジック(上下)』や森卓也の『定本アニメーションのギャグ世界』なども忘れられない文献だった。筆者と共著の『日本アニメーション映画史』を自薦するのはおこがましいが、アメリカ議会図書館が同書を購入してくれたのは誇り。

アニメライターと銘打ったが、要はTV・映画といったメジャー流通系アニメ(いわゆる“商業アニメ”)の歴史と制作技術を手っ取り早く押さえる11冊という趣旨である。作品個別のムック、雑誌などにも見逃せない記事は多いが、あくまで基本が理解出来る本ということでセレクトした。